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 電車が怖いんです

「電車が怖いんです」。
流れ落ちる汗をハンカチで拭いながら、そう語った彼は、営業担当の会社員でした。日々電車に乗らないわけには行きません。それにもかかわらず、毎朝、電車に乗ることを考えただけで息苦しくなってしまうのでした。

大学を卒業するまでの彼は、スポーツマンで人懐っこく、誰が見ても自信に満ち溢れていました。
そんな彼の変化のきっかけは、些細なことでした。
その日は電車のトラブルにより、いつもより車内がひどく混雑していました。快速電車のため、次の停車駅まで数十分間、扉が開くことはありません。車内が蒸し暑かったこともあり、目の前の女性の息遣いが次第に苦痛に満ちたものへと変わっていく様を見ていました。
「苦しそうだけど、大丈夫かな」。
はじめはそう思っていました。
ところが、身動きの取れない状況の中で彼女の苦しそうな息遣いを聞いているうちに、先日上司に叱られたときの息苦しさがよみがえって来たのでした。

以来、彼は電車に乗ると息ができなくなる不安に怯え、各駅停車にしか乗れなくなりました。さらにひどいときは、一駅ずつ下車し、しばらくベンチで休むようになりました。出社どころではなくなってしまいました。

パニック障害

自信に満ち溢れているかのように見えていても、それがその人のすべてではありません。誰もが不安や恐怖を抱いているのです。
この男性は、閉じられた狭い空間の中での息苦しさから、パニック発作という症状が引き起こされました。
セラピーでは、閉じられた狭い空間や息苦しさということの連想が語られて行きました。また、上司に叱られた体験からさまざまな過去の体験も想起されました。電車に乗るのが怖いという体験を通し、自信に満ちた自分でいることから、少しずつ肩の力を抜いて生きることを認める変化が訪れました。

2021年03月03日

会社に行くのが辛くて…

マキさんは最近転職をしました。数回目の転職です。だからこそ「これで最後にしたい」との強い思いで転職活動をしました。
やっと決まった 新しい会社での仕事内容は、今までの経験を生かせるものでした。だからこそ、内定がもらえたときは今までの自分を評価されたと嬉しく思いました。

しかし、私の元を訪れたときのマキさんは絶望の淵にいました。

あんなにいろいろ考えて職を選択したのに。
自分の専門性を嘱望されての入社だったのに。
なんで何も思うようにさせてくれないのか。

なんで?という自問の連続でした。

最近は、毎朝会社に行きたくない自分と戦わないと出勤できなくなっていました。




「会社に行くのが辛い」
という気持ちのふさぎを抱えてカウンセリングに来られる方は、とても多い印象があります。
「行きたくないって思うこと、あるよね」と、頷かれるのではないでしょうか

不適応状態

その環境にうまく適応することができていないという意味で、不適応状態と言います。
私たちはなぜ、不適応状態に陥ることがあるのでしょうか。

大別すると、他者(環境)の問題か、自分の問題か。

「人のせい」にするのはとても簡単です。自分のせいではないと思う時点で、ちょっとこころが楽だったりもします。人のせいにだけする人はカウンセリングにはいらっしゃいません。生きていることに苦しみを抱え、さらに、どうしたらいいのか考えようとされる方がセラピーの場にやって来られます。
かといって、自分が悪いことを証明するのがセラピーではありません。
精神分析は真の自分の発見を目指します。
どんな自分を不適応を起こすのか、それがどのような自分に由来しているのか、自分を縛ってきた行動や思考がどこにあるのか。

「そういうことだったのか!」

自分で発見するからこそ、何事にもかえがたい経験になるのだと思います。

2021年03月06日