精神分析について

夕暮れ

精神分析は、20世紀のはじめにフロイトによって創設された、こころの治療技法です。

フロイトはこころには構造があることを発見しました。
それは、「意識」よりも、本人には未だ気づかれていない「無意識」が私たちのこころに大きな作用をもたらしているという発見でした。

多くの人には、その人特有の癖があります。
なぜか同じような対人関係になってしまうことがよくあります。
言い間違いをすることは日常茶飯事です。
こうすべきだ、こうにちがいないという思い込みもよくあります。

夢を見たことがないという人もいないと思います。
寝ているときの夢は、実に多様なものです。

これらは、無意識のなせる業です。
私たちは、誰もが無意識にとらわれているのです。

無意識をひも解いていく精神分析では、クライエントはカウチと呼ばれる寝椅子(ソファー)に横になります。
そして自分のこころ模様に思いをはせ、その風景をことばにしていきます。
目を見て話すことに重きを置かれている日常生活とは異なるコミュニケーション方式をとるのが、精神分析の特徴の1つでもあります。
治療者と対面していると、治療者の目などの視覚情報に惑わされてしまいます。
それは無意識に目を向けていく作業の妨になるため、カウチに横になり、リラックスした中で思いめぐらせて行きます。

その間、治療者はクライエントと共に、その世界に思いをはせます。
そして、そのときに生じていることをことばで伝えていきます。

無意識の世界は、治療者との関係の中にも現れてきます。
過去にうまくいかなかった人との関係性が、知らず知らずのうちに治療者との間でも繰り返されるのです。

それは「キャンセル」にもよく現れます。
精神分析では、「キャンセル」という行為も大切にします。
なぜなら、決められた時間と空間を提供し無意識を扱う精神分析では、その時間を使わないという判断をしたことに意味を見出すからです。

なぜ、来たくなかったのか。
無意識の重要な感情がキャンセルという行動を引き起こしていることに、次第に気づかれることでしょう。

自分の中のとらわれや空想、思い込みなどに気づき、変容していくためには、数年単位の時間が必要になります。
変わりたいと願いつつも、自分が変わって行くことに対し何の抵抗も生じないことはほぼありません。
人はみな、とても葛藤的です。
だから、フロイトは週5回のセラピーを行っていました。
現在ではそこまでの頻度で行うことは少なくなっていますが、それでも最低でも週1回のセラピーは必要になります。

あらゆる行為には意味があることを見出し、こころのあり方を真に理解し、やがてとらわれつづけたものから自由を手にしていく。

それが精神分析です。